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おけの会とは

テクノロジーが益々進化し、人工知能時代とも言われる、これからの時代に必要な知性とは何か? 文字化された言語情報で表現される知性だけでなく、文字化されない身体性や森羅万象を感じる知性を含め、日本の神話、伝統文化から、現代に必要なリベラルアーツ〜人間として自由に生きるための知性〜を見出し、人間が持つ可能性の扉を開くことを目的とした学び・体験をする集いの場。

 

おけの会の”おけ”は、古事記や日本書紀、古語拾遺にも出てくる岩戸に隠れた天照大神が再びこの世に出てきて暗闇の世から光溢れる世になったと言われる「天の岩戸開きの神話」の場面で、神々が歌った喜びの言葉「  あはれ、 あなおもしろ、 あなたのし、 あなさやけ、おけ!」  の「おけ」から命名。

■おけの会 立ち上げメンバー

・宍戸幹央:鎌倉マインドフルネス・ラボ代表

・大野百合子:『日本の神様カード』『日本の神託カード』著者

・宮田正秀 : 言語家/ITコンサルタント

      ファシリテーター/一般社団法人1964TOKYO VR事務局長

・河本ここの:#910(ここのつ島)オーナー・Vision Quest主宰

・宍戸潤子

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第1回 おけの会 開催レポート

2017年11月19日 鎌倉能楽堂にて能楽師の安田登さん・チェリストの新井みつこさん・舞踊家の野口暁さんをゲストに招き、「おけの会」第一回を開催しました。

 

【おけの会の趣旨】

 テクノロジーが益々進化し、人工知能時代とも言われるこれからの時代に必要な知性とは何か? 文字化された言語情報で表現される知性だけでなく、文字化されない身体性や森羅万象を感じる知性を含め、日本の神話、伝統文化から、現代に必要なリベラルアーツ〜人間として自由に生きるための知性〜を見出し、人間が持つ可能性の扉を開くことを目的とした学び・体験をする集いの場。 おけの会の”おけ”は、古事記や日本書紀、古語拾遺にも出てくる岩戸に隠れた天照大神が再びこの世に出てきて暗闇の世から光溢れる世になったと言われる「天の岩戸開きの神話」の場面で、神々が歌った喜びの言葉「 あはれ、 あなおもしろ、 あなたのし、 あなさやけ、おけ!」 の「おけ」から命名しました。

 

 

【『古事記』の文字から日本人の古層を探る】

今まで本を約30冊書いてきたという安田さんですが、古事記のお話をするのはほとんど今回が初めてとのことで、貴重な機会を頂きました。ギリシャ語・ヘブライ語・アッカド語・シュメール語などを勉強されてきたという安田さん。その勉強家ぶりには圧倒されます。2018年に2冊、世界の神話と照らし合わせながら、古事記に関する本を書く予定だそうです。

 

そんな文字の専門家安田さん曰く、文字から考えていくことで、特に古事記を読むことで、前古代の日本人はどんな精神性を持っていたのか、知ることができるといいます。

話はいったん未来に移りますが、2045年にシンギュラリティ(特異点)がやってくると言われています。10万円くらいのコンピュータに入っている人工知能が、人類の知能を凌駕するというのが基本の予測だそうで、その際に起こることは大きく3点あります。 G:遺伝子 N:ナノテクノロジー R:ロボット。これらの変化によりほとんどの人間は不死に近くなると言われており、VRの世界も進んできます。この未来に対して我々はどう向き合えば良いのか未知なことも多く、とまどうどころであるかとは思いますが、実は人類はかつて何度もシンギュラリティを体験してきていて、過去には”文字シンギュラリティ”というものが起こっており、我々はそこから学ぶことができるといいます。

 

【文字誕生による「心」の誕生】

文字ができた以前以後で人類の思考は大きく変化しました。文字以前・文字以降で歴史を考えると面白いことがわかります。もっとも古いのは、メソポタミア文明。シュメール語。ほぼ同時に古いのは、エジプト文明。

そして、その歴史を辿っていくと、文字以前は女性が強大なリーダーシップを持っていた女性社会だったことが分かります。当時の文献を読んでいると、当時最大の軍隊を率いていたのが女王だったということも書かれているそうです。

また、古代中国において紀元前1300年の時点で甲骨文字は約5000文字あったと言われていますが、そこには「心」という文字がなかったと言います。ちなみに現状解読されているのは2000文字です。紀元前1000年に表されている「心」という字ですが、男性の性器を表したものだと言われています。

またシュメール語・アッカド語・ヘブライ語・古代ギリシャでも、内臓を表したものが「心」と言われていました。また、「憐れみ」は女性の性器・子宮から内臓の部分にあると考えられていました。

そしてなんと、日本語の「心」は内臓の中にあると考えられていました。

 

【心はどこにあるのでしょうか?】

みなさん、心はどこにあるイメージがありますか?と安田さんは問いかけます。 

安田さんのお能の先生のお父様は神社の神主をされており、終戦の翌日、切腹されたといいます。当時、切腹とは、自分の心が汚くないことを見せることを表していたそうです。

そして、今の子ども達に「心はどこにありますか?」と質問すると、頭にあると答えるそうです。この一連のことから分かるのは、心は、古代は性器にありましたが、時代を重ねるに連れ、どんどん位置が上がってきており、おそらく、このあとは頭よりも更に上になり、心の行き場がなくなってきているとも言えます。今までの流れが終わりに来ている面白さが今、あります。

その面白さを味わうためにも、文字ができた直後、文字がなかった世界の残滓がある時代のもっとも古い作品『イナンナの冥界下り』を演じてみましょう、ということでみなさんで朗読をして演じてみました。

知らない古代の言葉を朗読するという稀有な体験を通じて、参加者の皆さんは心や身体に響くものがあったと思います。

 

心のお話の後は夏目漱石の『夢十夜』をチェロとお能で表現してくださいました。

薄暗い舞台の上で、舞台全体に響き渡る安田さんの声とチェロの音色が重なり合い、重厚感のある演目でした。

後半では、天の岩屋を皆さんで朗読し、理解を深めました。

 

『文字化とは、脳の外在化のツールである』と安田さんは言います。脳の中で考えたことを外に置くことで、脳に余白を作り、新たなことを考えたり思いつくことができるのです。 温故知新という言葉がありますが、これは古いものをグツグツ温めること、今まで誰も気づいていなかったことが突然現れることだと言います。 

お稽古ごとや勉強などでもそうですが、全然進歩していないように思えるとき、実はその時に魔術的な時間が動いていると言います。その魔術的な時間を動かすためには、あるときふと気をぬくことや旅行に行ってみることが大切です。大器晩成という言葉があるように、ある日、突然上手くなるのですが、そのタイミングは分かりません。それでも”ある日”はいつかやってくるわけですから、途中でやめてはならないのです。

【初心忘るべからずの本当の意味合い】

また、風姿花伝を書き、能を完成させた世阿弥のお話も印象的でありました。世阿弥が大切にしていた言葉:それは初心忘るべからず。世阿弥が使っていた意味合いと、現代私たちが使っている意味合いでは大きく異なるといいます。着物を作る際に、最初にハサミを入れる、それが初なのです。

今いる場所から次に変化する際に、過去の自分を断ち切りなさいという意味で世阿弥はその言葉を使っていたとのこと。どんどん断ち切って、変化せよ。時時の初心。人には様々なステージがあり、ステージの変化ごとに、自分を切って捨てていくこと。現代社会において、このステージの切り替えがうまくいっていない面もあり、これが一つの問題だと安田さんはおっしゃいます。

 

その後、古事記の中の天の岩戸開きの箇所を参加者一同で朗読をし、安田さんが説明をし、チェリストの新井みつこさん・舞踊家の野口暁さんと共にそのシーンを再現して頂くという贅沢なものでありました。

文:泉 愛

Lecturer Profile

能楽師 安田登

1956(昭和31)年千葉県銚子生まれ。下掛宝生流能楽師。能のメソッドを使った作品の創作、演出、出演も行う。また、日本と中国の古典に描かれた“身体性”を読み直す試みも長年継続している。古代シュメール神話を能の身体性で語る「イナンナの冥界下り」を企画。シュメール語と日本語を交えた上演が話題になり、アーツカウンシル東京の助成を得て18年にはヨーロッパツアーが予定されている。

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